INDEXフィクション 【短編小説/800int】『泥濘の吾子』 800 INT 2023年10月20日 フィクション 【短編小説/800int】『泥濘の吾子』 短編小説です。文字数は8000文字ちょっと。さっくり10分くらいで読み終わります。 気分転換のために書いたものであること、ストーリーはこのあいだ自分が見た夢を下敷きにして、文体も手癖で書ける口語体にした低コスト仕様なので800intです。たくさん読んでほしいなという気持ちの方が強めのお値段。完全に手癖で書いたので文章は回りくどくてこってりめ。 注意:暴力的なシーンがあります。特に男性が怒鳴ったり暴力をふるうことに対する恐怖がある方は避けた方がいいです。あまり爽やかな気持ちになる話しではない。読後感は悪い。 出だし↓ あまりにも夕焼けが赤くて、指の先から溶けて消えてしまいそうな日でした。 わたしの家は、祖父のさらに高祖父の代からこのあたりの地主だったとかで、家のあたりすべてが『我が家』と呼べる領分でした。茫洋と畑が広がり、山肌には果物の木を植えていて、そのあいだを小さなトロッコが通り抜けていました。 わたしと妹はいつだって家の中で遊べと言われ、その家の中というのは畑や山も指していました。わたしたちの周りにはいつだって誰かがいて、駆けまわっているのを見守ってくれていました。上のお嬢さん、下のお嬢さんと呼ばれ、こっちにいらっしゃいと手招かれては、飴玉だとか、キイチゴ、あせびを口の中にほうり込んでもらい、桃や柿が乗ったトロッコに同じように乗せてもらって、わあわあと歓声をあげていました。 あのとき、どうして大人が誰一人としていなかったのか、わたしたちはどうしてそこに行ったのか、もう記憶はだいぶおぼろげです。 畑のあぜ道に汚れた人形が落ちていました。 わたしの持っていた人形たちとはかけ離れた、丸いだけの頭と、関節もなく取り付けられただけの手足。古ぼけてくすんだ黄土色の肌は泥にまみれ、雑草の中に埋もれた様子は、誰か小作人の子どもが投げ捨てただけのようにも見えました。 目次 [ open close ] このコンテンツはパスワードで保護されています。閲覧するには以下にパスワードを入力してください。 パスワード: INT: 800 UserID numbers: 430063109969936394 YuuyakeKoyake